人工透析の原因とは?中高年が知っておくべきこと

はじめに 近年、日本の人工透析患者数が増加傾向にあります。特に中高年の方々において、腎臓の病気が進行して透析治療が必要になるケースが多くなっています。

しかし、透析治療の必要性や原因については、まだ十分に理解されていないのが現状です。腎臓病は見えにくい病気ですが、適切な予防と早期発見、早期治療が重要です。

そこで本記事では、人工透析の主な原因疾患と、中高年の方々が知っておくべき腎臓病予防の方法について解説します。透析治療につながる腎臓病の予防と早期発見に役立つ情報をお届けします。

人工透析の主な原因疾患

人工透析が必要となる最も主な原因疾患は以下の3つです。

糖尿病性腎症 糖尿病の進行に伴い、腎臓の機能が徐々に低下していく病気です。高血糖が続くと、腎臓の微小血管が傷害されて尿タンパク排出が増加し、最終的に腎不全に至ります。

高血圧性腎症 長期にわたる高血圧が腎臓に負担をかけ、腎機能の低下を招きます。高血圧により腎臓の血管が傷害されるのが主な原因です。

慢性糸球体腎炎 免疫の異常によって腎臓の糸球体が炎症を起こし、徐々に腎機能が低下していく病気です。原因は特定されていませんが、遺伝的要因や感染症の関与が考えられています。

これら3つの疾患は、中高年の方々に多く見られる腎臓病の主な原因です。特に、糖尿病や高血圧といった生活習慣病が腎臓病の発症に大きく関わっています。

中高年の腎臓病予防のポイント

では、中高年の方々ができる腎臓病予防の方法について解説します。

生活習慣の改善

  • 適正な体重の維持
  • 運動習慣の確立
  • 食事療法の実践

定期的な健康診断

  • 血圧・血糖値・腎機能検査の受診
  • 異常値がある場合は早期受診

早期治療とコントロール

  • 糖尿病や高血圧の適切な治療
  • 重症化を防ぐ早期発見・早期治療

まずは、生活習慣の改善から始めましょう。中高年の方々は、加齢に伴って様々な生活習慣病のリスクが高まります。

特に、肥満・糖尿病・高血圧は、腎臓病の大きな危険因子となります。適正な体重の維持、運動習慣の確立、食事療法の実践など、生活習慣の改善が何より重要です。

次に、定期的な健康診断を受けることが欠かせません。血圧、血糖値、腎機能の検査を定期的に受けることで、腎臓病のリスクを早期に発見し、予防につなげることができます。

異常値がみられた場合は、速やかに医療機関を受診して、早期の治療介入が必要です。糖尿病や高血圧のコントロールが不十分なまま放置すると、腎機能が徐々に低下し、最終的に透析治療が必要になる可能性があります。

糖尿病性腎症の予防と治療

糖尿病は、慢性腎臓病の最も主要な原因疾患です。特に、糖尿病の経過が長く、コントロールが不良な場合、糖尿病性腎症のリスクが高まります。

糖尿病性腎症の予防と治療のポイントは以下の通りです。

血糖コントロールの重要性

  • 適切な食事療法、運動療法、薬物療法による血糖管理
  • HbA1c値を適正範囲に保つことが肝心

高血圧の管理

  • 高血圧もリスク因子となるため、適切な降圧療法が必要
  • レニン-アンジオテンシン系阻害薬が第一選択

蛋白尿のコントロール

  • 蛋白尿は腎機能低下の指標
  • 蛋白尿を減らすことが腎機能保護につながる

定期的な検査と受診

  • 血糖、血圧、腎機能、尿検査を定期的に実施
  • 異常値があれば速やかに医療機関を受診

糖尿病患者さんは、これらのポイントを意識しながら、医療スタッフと協力して、自身の病状管理に取り組む必要があります。 適切な治療とコントロールができれば、糖尿病性腎症の発症と進行を予防できる可能性が高まります。

高血圧性腎症の予防と治療

高血圧も、慢性腎臓病の主要な原因疾患の1つです。長期にわたる高血圧が、腎臓の微小血管を傷害し、腎機能低下を招きます。

高血圧性腎症の予防と治療のポイントは以下の通りです。

適切な降圧療法

  • 生活習慣改善と降圧薬の適正な併用が重要
  • レニン-アンジオテンシン系阻害薬が第一選択

蛋白尿のコントロール

  • 蛋白尿は腎機能低下の指標
  • 蛋白尿を減らすことが腎機能保護につながる

定期的な検査と受診

  • 血圧、腎機能、尿検査を定期的に実施
  • 異常値があれば速やかに医療機関を受診

高血圧患者さんは、生活習慣の改善と適切な降圧療法に取り組むことが重要です。特に、レニン-アンジオテンシン系阻害薬は腎保護効果が高いため、第一選択薬として用いられます。

また、蛋白尿のコントロールも重要で、これを減らすことが腎機能の保護につながります。定期的な検査と、異常値があれば速やかな受診も欠かせません。

高血圧の適切な管理ができれば、高血圧性腎症の発症と進行を予防できる可能性が高まります。

慢性糸球体腎炎の予防と治療

慢性糸球体腎炎は、原因が特定されていない腎臓病ですが、遺伝的要因や感染症の関与が考えられています。

慢性糸球体腎炎の予防と治療のポイントは以下の通りです。

原因の特定と早期治療

  • 腎生検による正確な診断
  • ステロイドなどの免疫抑制療法

感染症予防

  • 上気道感染症の予防
  • 定期的な健康診断の受診

高血圧・蛋白尿のコントロール

  • 高血圧や蛋白尿を適切にコントロール
  • 腎機能保護に重要

食事療法の実践

  • 蛋白質、塩分、カリウムの制限が肝心
  • 専門家による個別の指導が必要

慢性糸球体腎炎の場合、原因の特定と早期の適切な治療介入が重要です。腎生検による正確な診断のもと、ステロイドなどの免疫抑制療法を行うことが主な治療法となります。

また、上気道感染症の予防や、高血圧・蛋白尿のコントロールも欠かせません。食事療法の実践も、腎機能の保護に役立ちます。

これらの対策を組み合わせることで、慢性糸球体腎炎の進行を可能な限り遅らせ、透析導入を先送りすることができます。

まとめ

人工透析の主な原因疾患は、糖尿病性腎症、高血圧性腎症、慢性糸球体腎炎の3つです。特に、中高年の方々において、これらの疾患が透析導入の主因となっています。

そのため、中高年の方々は以下のような腎臓病予防の取り組みが重要です。

  • 生活習慣の改善(適正体重、運動、食事療法)
  • 定期的な健康診断の受診
  • 糖尿病や高血圧の早期発見・早期治療

また、各疾患の特徴に応じた予防と治療のポイントも理解しておく必要があります。

  • 糖尿病性腎症: 血糖・高血圧・蛋白尿のコントロール
  • 高血圧性腎症: 適切な降圧療法と蛋白尿管理
  • 慢性糸球体腎炎: 感染症予防と免疫抑制療法

これらの取り組みを通じて、中高年の方々が自身の腎臓の健康を守り、透析導入を回避することができます。

健康診断の受診や生活習慣の改善など、できることから始めましょう。そして、異常が見つかった際は、早期に医療機関に相談することが何より大切です。

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